

狭心症になったら薬剤内服と日常生活改善を徹底して、冠動脈の劣化を修復し心筋梗塞に行かせないようにします。
狭心症は初期軽症~中程度であれば、まず徹底した薬剤治療と日常生活改善で症状が完全に消えることがあります。そんな時、患者さんは「狭心症が治った!」と感じるでしょう。積極的な薬剤治療で症状が安定すれば、その段階で心臓カテーテル検査等で病気の重症度を最終チェックすることをお勧めします。その結果次第ですがステント挿入(カテーテル治療)は必ずしも必要でなくなるかも知れません。
症状が重症ならステント挿入や冠動脈バイパス手術が必要となることが多いでしょう。
心配な時は医師に相談ください。
◆222 心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
薬だけの狭心症治療とは?

狭心症になってしまった!
不幸にして狭心症になってしまった方は非常に残念です。しかしこれからはさらに病気が進行した心筋梗塞にならないよう、出来れば狭心症の原因の冠動脈が少しでも正常に戻るように、日常生活改善と薬剤治療の両輪で積極的に努力しましょう。
狭心症の本体は、心臓をぐるりと取り巻く心臓の栄養血管(冠動脈)が劣化・老化し傷んだ状態になって起こった病気です。なぜ老化したか、老化の原因は別のところでお話しするとして、この血管の劣化・老化をどうやったら直すことが出来るか?が治療の本質です。
現在、その治療の基本は、1)日常生活の改善、2)薬剤内服、3)血管の風船療法やステント埋め込み、4)血管のバイパス手術などです。 心臓病の症状と治療■09 日常生活の過ごし方
狭心症の治療は、ステントで拡張する方法や冠動脈バイパス手術があまりに有名ですので、多くの方はステントを入れたりバイパス手術でしか狭心症は治す方法がないと思い込んでおられるようです。
「狭心症を、薬や生活改善でも治せるのか?」の疑問や驚きが出てくるのでしょう。
初期軽症~中程度なら、薬でなおる?
狭心症が薬でも治療可能な病気であることを知って驚く方がいます。しかし限定的ですが、初期軽症~中程度までの狭心症の患者さんなら薬で治すことが可能な場合があると考えます。
薬剤治療で症状が安定した時期になったら、心臓カテーテル検査等で病気の重症度を一度最終チェックしておいた方がよいと思います。
ステント挿入や冠動脈バイパス手術が必要になるかも知れませんが、必要ではなくなっているかも知れません。 ◆163 狭心症 カテーテル検査なしでも、診断治療できますか? ー診断的治療法ー
重症なら、薬では無理かも?
当院の様な初期軽症から中程度までの患者さんがほとんどの医療機関なら、狭心症は薬剤内服と日常生活の改善でかなり制御可能です。
一方当院では非常に少ない重症の狭心症の場合には様相は全く違います。ステント挿入やバイパス手術が必要な方が急増するでしょう。心臓病専門の医療機関、大学病院や大病院などではそんな重症患者さんが集中していると思います。
しかし国内の狭心症患者全体に占める重症患者の割合は相対的に低いと思います。その多くは軽症から中等症だと思います。そしてそのような患者の大部分は当院のような小さなクリニックで管理・治療されていると予想しています。
基本は、薬、減量、運動

初期軽症~中程度の狭心症の患者さん限定ですが、治療は薬で可能とお話ししました。では薬さえ飲んでいれば治るのかと考えるのは間違っています。
薬は治療としての基本で必ず必要なのですが、それと同等に場合によっては薬以上に重要なのが日常生活の改善です。 ◆102 心臓病 生活改善は、徹底的にアンチエイジング
狭心症患者さんの日常生活改善の基本は、
1)肥満の解消・体重減量:減食で標準体重に近づける
2)適度な運動:適度な運動を日常的に継続する
3)危険因子:正常血圧、高血糖・高尿酸対策、禁煙、ストレスを減らす
などです。
体重の減量:減食、断酒または節酒
体重減量の理想的な目標は、BMIを23以下程度まで下げることです(*BMI = 体重(Kg)/[身長(m)x身長(m)] )。もしその目標が達成困難なほどに現在が肥満状態なら、せめて現在の体重から5~10Kg程度でも減量することです。 心臓病の症状と治療■10 体重管理と栄養管理
この体重の減量は口から入る食物を減らさなければ到達は困難でしょう。三度の食事と間食と飲酒、これを減量することです。特に効果的なのは、間食をゼロにすることと断酒です。
三度の食事を変えなくても(減らさなくても)、間食と飲酒を完全に断てれば確実に減量が実現できると思います。
もしそれでも十分な減量が実現できない場合には、三度の食事の減量を始めて下さい。減量するのは主食(炭水化物)だけではありません。
糖質ダイエットと言って炭水化物の主食をゼロにし副食(おかず)を増やす方がいますが、これでは栄養素のバランスが良くありません。主食と副食はバランスよく減量して、炭水化物、タンパク質、脂質の3栄養素を6:2:2の割合で摂るようにして下さい。
糖尿病でないならこのバランスが体全体にとって適切だと言われています。分かりやすく言えば、今現在の食事を主食、副食共に2~3割減量する事です。
糖尿病の場合なら、炭水化物、タンパク質、脂質の3栄養素を4:4:2の割合が良いのではないかと思います。
いろんな体重減量法が言われていますが、自分に合った長期間継続可能な方法で目標体重まで減量することが大切です。
運動:早歩き、ジョッギング、筋肉トレーニング
運動でまず注意することは、現在狭心症発作が多発している方や運動で発作が誘発される方は控えることです。運動療法を何時から開始するかは主治医とよく相談して下さい。
運動療法とは、運動することが危険である状況が去って十分な運動をしても問題がない状況になった方のお話です。
現役で働いている方なら、60分間程度の運動を毎日継続することは相当に困難です。せめて週一、二回の休日だけでもまとめて2~3時間の運動を長期に継続して下さい。大切なのは日常生活の習慣となるまで運動を継続し続けることです。
生涯にわたり運動を続ける意志で取り組んで下さい。運動療法の内容やメニューは、何でも結構ですが自分が長期間にわたり続けられるものを選んでください。
どんなに良い運動と言われていても自分が長期に続けられない運動は良い選択とは言えません。全身にバランスよく適度な負担がかかる強度があることと、四肢の筋力も増強させるような筋トレ運動も同時に取り入れると良いと思います。
ジョッギングか早歩きで心肺機能を含めた全身のバランス良い運動をします。男性なら時速5~6Km/Hr、女性なら時速3~4Km/Hr程度のスピードで30~60分間の早歩きであれば適度な負荷でしょう。
可能ならその時の最高脈拍数は (210 – 年齢)x0.75 で計算した値を超えない程度でしばらく続けることです(たとえば50歳の運動時の最高脈拍数は一分間に120です、(210 – 50)x0.75=120)。
その運動に慣れてきたら徐々に最高脈拍数の限度をあげて行けばよいでしょう(0.75 → 0.78 → 0.80)。適度な運動量はその方の心臓の病気の重さと種類でかなり差がありますから主治医の指導を受けて下さい。 心臓病の症状と治療■11 日常生活での運動
筋トレ運動は部位によって運動方法が違いますから、加齢で生活に大きな影響がある腰から下の筋トイレが最も大切です。その他にも適切な機械や道具を使って、上肢、腹筋、背筋、胸筋等も同時に鍛えて下さい。これらの機械はジムに行けば揃っているでしょう。そこで参考にして下さい。
高血圧、タバコ、高血糖、高尿酸、ストレス
狭心症の日常生活で大切なのは、肥満の解消(痩せること)と適度な運動の継続ですが、狭心症を徹底して治療するには更に、血圧を正常にする(最も重要です)、禁煙、高血糖や高尿酸を正常化する、仕事のストレスを減らす、生活を規則正しくする、睡眠を十分とるなど、薬の十分な内服や日常生活の様々な節制が必要になります。
狭心症克服のための、検査値の目標
これらを徹底的に改善する事が狭心症の克服に最も有効です。そのための各検査データの目標値をここで詳しくお話ししました。 ◆168 狭心症・心筋梗塞 治すため、検査データの目標値!
まとめ
十分な薬の内服を続けながら、以上の様な日常生活が実現できれば「狭心症は薬で治る!」と考えてもよいと思います。当クリニックではそのような生活が実現できて狭心症を克服した患者さんが多数通院しておられます。
「狭心症を薬で治す!」ためには、生活改善の努力が欠かせないことを強く自覚し本気で取り組んで下さい。きっと狭心症は克服できるでしょう。希望を持って頑張って下さい。
将来は分かりませんが、現在はここで書いたことを実行すれば心臓を守れるでしょう。この道が狭心症・心筋梗塞を克服する王道です。
丈夫な心臓は皆さんの天寿まで軽々と働き続けるでしょう。
そして・・、狭心症なら?
狭心症・心筋梗塞の五部作
胸痛を専門医が診断する手順:
◆062 胸が痛いのは心臓病? ーその診断方法ー
狭心症を早期発見する:
◆290 狭心症・心筋梗塞 超早期の発見は、静かな症状に注目!
発作から病気の重さを予想する:
◆349 狭心症・心筋梗塞 発作からわかる、緊急性と重症度
狭心症になり初めて診察:
◆130 狭心症の治療開始 初めての診察の風景
狭心症を、薬と生活で治す:
◆257 狭心症・心筋梗塞 食事・運動・薬でなおす
心臓病の究極予防:
◆369 心臓を健康にする ー心臓病・心不全の超予防ー
狭心症コラムの特集:
特集:狭心症・心筋梗塞 症状・治療・リスク
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