

健康の獲得に大切な2つ、ダイエットで体重減量と運動の継続
生涯にわたって健康であるためにどのようなことに注意すればよいか、当院の多くの患者さんの経験からいろいろな角度でお話ししてきました。それは、けやき坂スタイル で簡潔にまとめて書きました。
生涯の健康であるために、日常生活で最も力を入れて目指す両輪とは、1)スリムな体型を獲得、維持すること、2)運動の継続で体の代謝を変え全身臓器を活性化させ続けることです。その価値と効果は当院での経験だけでなく、多くの国際的な大規模医学研究からも明らかです。今日は、その2つの実現しやすさと重要性の時期の違いについてお話ししてみたいと思います。
この二つ以外にも、3)医薬品のパワーを借りて、病気を予防し老化を防ぎ若返ること、もまた同時に大切なことです。この点もお忘れにならないで下さい。
ダイエットで、一ヶ月体重1Kg減量なら、毎日食事を20%減量
体重を一ヶ月に、脂肪として1Kg減量を目標にしたとします。大雑把に計算しますと、ダイエットなら一日あたり300Calの食事の減量をすればよいことになります。これは1日に食べる総カロリーを1500Calとすれば約20%に、2000Calなら15%程度に相当します。言い換えますと、食事や間食で毎日食べる総量の約2割程度を我慢して減量すれば実現可能です。
見方を変えれば、毎日食べる総量の2割も減量してやっと月に1㎏しか体重が減らないことです。食べる量を2割少なくするのはかなりの努力が必要です。三度の食事をおなかに十分食べていたとすれば、ダイエットの食事制限を始めたら腹8分にしないといけません。まだまだ食べたいと思うレベルで止めなければなりません。そんな努力をしても月にたったの1㎏の減量ですから、10㎏の体重減量を目標にするなら、それを10か月間続けなければなりません。
もっと短期間で減量したいと思えば、2割どころか半分量まで食事の量を減らさなければなりませんが、医学的な立場からはそれほどの急激な体重減量は健康的な減量とはいえないと思います。食事の減量で体が自己調節可能な速度は、やはり月に1~2㎏が適当だと思います。体重の減量をあまり急がないで下さい。
最初の1~2か月間は食べる量が少なくてかなり辛いと思います。しかしその時期を乗り越えますと、胃袋のサイズは小さくなり体の代謝も少ない食事量に適応しますから、「食べたい」の強い欲望がかなり穏やかになってきます。食事量の少なさに慣れてそれほど苦しくはなくなりますのから、それ以後は比較的楽に減量が進んでいくでしょう。最初の苦しく辛い2~3か月間を強い意志で乗り越えられるかどうかがダイエット成功の秘訣です。
目標とする体重や実際的な減量方法は、特集:アンチエイジングは減量からや、特集:若返りで楽しい人生 でお話ししました。
運動で、一ヶ月体重1Kg減量なら、毎日早歩きを2時間
もし同じ目標(体重を一ヶ月に1Kg減量)を運動で実現するなら、毎日300Calの運動量をしなければなりません。非常に大雑把に計算すれば、速足の歩行を2時間毎日続けなければなりません。睡眠時間を減らしてでも多忙な毎日の仕事をこなしている現代社会人にとって、毎日これだけの運動量はいかに大変な事か容易に想像できます。時速6㎞ほどで2時間歩かなければなりません。それを毎日です。
通勤で12キロを2時間で歩くのが最も現実的かも知れませんが、荷物を持って通勤着姿でそれだけ歩くのはかなり困難でしょう。これだけ歩くと汗もかきます。通勤着ではなく運動着とならざるを得ないでしょうが、服や手荷物をどうするか等、実現には困難な問題ががたくさんあります。
運動の目的を、痩せるためとはしない
運動を毎日するのが理想的ではあっても、それだけの運動量なら休日にまとめてするのが現実的な姿になると思います。休日の一日だけで一週間分の運動をするのはやり過ぎになります。どんなに多くても2~3日分が限度でしょう。そのように考えますと、運動だけで目標の体重減量を実現するのは多くの人にとって困難であることが理解できると思います。
このように現役世代では運動での体重減量はかなり難しいですから、体重減量はダイエットの食事療法を中心にして、運動療法は補助的な役割とする方が実際的だと思います。
運動継続は、体の代謝を変え、全身臓器を活性化させ若さを保つ
健康を獲得するために運動の大切さは立証済みです。ダイエットによる体重減量と同等だと思います。その運動は体重減量のためではなく、減量以外の効果を目標にするのがよいと思います。運動で痩せようとは思わず、体の代謝を変え全身臓器を活性化するために、体の若さを維持するために実行するのがよいと患者さんにはお勧めしています。
現役時代はダイエットでスリム体型に、定年後は運動で筋骨格系の機能回復を優先する
そのための運動であれば、現役で働いている時代なら、毎日ではなくても週に1~2回の休日だけの運動が現実的で、それが無理なく続けられる良い方法だと思います。そしてこの運動は生活の習慣となるまで持続し生涯にわたる継続が大切です。現役を離れ定年になれば時間にも余裕が出来ますから毎日でも運動が出来るでしょう。
60歳以後の年齢になれば、加齢とともに老化の進行は加速度的に早まります。特に筋肉や骨・関節の運動器の機能は急速に衰えはじめます。動けなくなれば内臓機能は健全であっても健康は急速に失われ寿命が短くなる事が分かっています。従って定年後はこの運動機能の劣化進行を抑えるため、若い時代以上に運動の意義は大切になります。
定年後では体重減量=スリム維持よりも、運動機能の回復に重点を移していくとよろしいと思います。若い現役時代はダイエットして肥満から解放されスリム体型を維持することを優先し、定年後は運動機能の維持のために毎日運動することに重点を移していくことをお勧めします。ただし、いつの時代でもダイエットと運動は両方とも常に実行してください。重点を置くことが違うと考えてください。
脂肪は減らしても、タンパク質は減らさないよう体重減量方法に気を付けて下さい。
◆076 健全な痩せ方 脂肪を減らし、筋肉・骨は増強を、◆135 50歳以上、筋力維持に蛋白質を多めに取る(News記事)