

要旨:血圧がなぜ高いのか?その理由で血圧の下げ方が違います。
一時的な「見せかけ」の高血圧と、持続性の「本物」の高血圧症の違い
高い血圧の値が出ても、それが直ちに病的な高血圧症だとは限りません。安静では正常な血圧でも、状況によっては驚くほど高くなることは良くあることです。そのような一時的な高い血圧を、私は「見せかけの高血圧」と言っています。その場合には急いで高血圧の治療や対策を考えなくてもよろしいと思います。この「見せかけの高血圧」と、持続性の「本物の高血圧症」はハッキリ区別しなければいけません。その区別については、 ◆161 その高い血圧 治療が必要な本物か?、不要な見せかけか? でお話ししましたが、二つを区別する要点は、一週間ほど家庭血圧を毎日測定してみることです。常時高ければ「本物の高血圧症」の可能性が高いと考えて下さい。
「見せかけの高血圧」と「本物の高血圧症」では、血圧の下げ方に違いがありますから、まず自分の血圧がどちらであるか考えてみましょう。
「見せかけ」の高血圧の簡単な下げ方
高い血圧が本物ではなくただの見せ掛けに過ぎないなら、その高い血圧は何かの理由で起こった一時的な現象と思われます。そんな状況とは、動き回った直後、話しながら、テレビを見ながら、寒い部屋で測った、緊張や興奮した直後に測定した等で高くなっても仕方がない状況で測定した場合、病院で医療従事者が血圧を測る場合だけ異常に上がってしまう白衣高血圧、血圧計の測り方が技術的に間違っていた等も考えられます。 ◆171 家庭血圧 誰でもわかる、測り方のコツ
高い血圧が計測されたのは、どの様な状況だったか思い出してください。動き回った後なら座ってから少なくとも15分以上静かにして測ってください。動いていた直後の測定であったら、その後しばらく静かにしているだけで血圧は下がってしまいます。高かったからと言って慌てて繰り返し何度も血圧を測らないで下さい。二度目は30分ぐらい静かにしてから再測定してください。その時に不安感を持たないで下さい。不安が強ければ、それだけでまた高い血圧になってしまいます。
検診や診察などで、医療従事者が血圧を測った場合に高くなる方がいます。高く出ると会社から再検査を指示されるので「高いと困る」と不安を感じながら測定します。すると益々緊張して高く出てしまうのです。再測定では、少し時間を置いてから、測定前に1,2回深呼吸し体の力を抜いてリラックスし目を閉じて無心で測定して下さい。それだけでも再測定で血圧は少し下がるでしょう。
「見せかけ」の高血圧の対処法
「見せかけの高血圧」になる具体的な条件です。心当たりがあれば対応の処置を試してください。血圧は下がっているでしょう。
●寒くなって、暖房のない寒い部屋で血圧を測るようになっていた
→ 時間をおいて、部屋が暖かくなってから再測定
●測定する前に動き回っていた、急いだり、興奮していた
→ しばらくして、体や気持ちが落ち着いてから再測定
●血圧を測る条件が、これまでと変わった
→ 条件を元に戻して再測定
●自分の何かの病気を心配し不安になっていた
●何かのトラブル、不幸、不安を心配している
●最近しばらく非常に多忙で疲れていた
●血圧測定で高い値がでた、そのこと自体を心配している
→ その原因が解決するまで高いでしょう。原因の不安、ストレス、過労等を解消して下さい
●ドリンク剤、サプリ、漢方薬、他の病院からの薬などを飲み始めていた
→ 原因確認のために、可能ならそれを止めて一週間ほどたってから再測定します
●前夜、睡眠不足であった
→ 今晩よく眠ってから、明日朝に再測定
●排便や排尿を我慢している時に測った
→ 用をすませてから測定する習慣をつける
●直前に動いていたが、休まずにすぐ血圧を測定した
→ 座って、しばらくたってから測定する習慣を
●測定の時、いつも何かを考えながら測っていた
●血圧計の数値を、じーっと見つめながら測っていた
●誰かと会話しながら測っていた
●テレビを見ながら、新聞を読みながら測っていた
●周囲が騒々しい環境で測定していた
→ 静かな落ち着いた環境で、目を閉じて無心で測定する
●最近、塩分の多い食事を多く摂るようになっていた
→ 塩分を減量して、一ヶ月後にくらいに再測定
●家庭血圧計の測り方が間違っていた(良くあることです)
→ 正しい方法で、血圧を再測定 ◆050 家庭血圧 誤った測定はかえって有害
「本物」の高血圧症:血圧の下げ方は?
本物の高血圧症なら「見せかけの高血圧」とは全く違います。「見せかけの高血圧」でお話しした方法を試せば少しは効果があります。しかしそれは一時的効果でしかなく、それだけで血圧を低く安定させることはできません。本物の高血圧治療には、長い地道な努力が必要です。柱は2つです。日常生活の改善と薬物治療の継続です。
日常生活の改善方法については、 ◆177 高血圧 薬を飲まずに下げられますか? でお話ししましたが、その要点は食事と運動と肥満の解消です。
サプリメントや民間療法は意味がないとは言いませんが、医薬品と比較して費用対効果のコストパーフォーマンスが悪いと思います。期待するような効果があるか疑問ですが、自分で試して効果を検証する方法を、 ◆187 高血圧を治療中 薬を増量せず少しは自力で降圧したいー自己評価法ー でお話ししました。サプリメントや民間療法を試したい方には参考になると思います。
医薬品の優れた降圧に勝る方法はない!
「本物の高血圧症」では簡単な手軽な解決策はないというのが結論です。長年の時間をかけてゆっくり体内にセットされてしまった高血圧の仕組みが、お手軽な方法やサプリメント等で簡単に解除されるわけがないからです。
本物の高血圧症の治療で医薬品に勝るものはありません。医薬品は飲むと直ぐにその効果が実感できます。患者さんはみんな、自分の身体が非常に快適、快調になったことを喜びます。本当の健康な体を心から実感されるのです。