

要旨:血管の老化が全身老化に直結すると言われます。老化で血管は劣化しますが、そこにある因子が加わればより速く劣化するでしょう。その因子とは肥満、ストレス、過労、重労働、運動不足、過度な運動、喫煙、多量の飲酒習慣、高血圧、糖尿病、高コレステロール、高尿酸等です。なかでも高血圧は自覚しないままに確実に血管を劣化、老化させる悪質な促進因子といえるでしょう。中程度以上の高血圧であれば老化が明らかになる年齢以前の早い時期に脳や心臓が重大な病気となるでしょう。
「老いは血管から」
老化とは時間の経過に伴って進行する全身の生物機能の劣化です。この老化は誰にもおこりますが進行の速度は同じではありません。またその老化進行の速度を速めたり遅くしたりする因子があることも分かっています。その因子を制御できれば持って生まれた老化速度を改善することが可能になります。
老化に大きな影響があるのは血管であることは想像されていました。ことわざに
「老いは血管から」、「人は血管とともに老いる」、「老化の程度は暦の年齢には比例しない」
があります。どれも血管の老化を制御できれば老化全体を遅らせて若々しい老人となることも不可能ではないことを予想しています。また
「老年期は賢者にとって黄金のときである」
の諺では、老年期にあっても健やかな肉体であれば老年期こそが人生で真に素晴らしい時期であろうと言っているようです。
血管の老化を制御し抑制できれば、健やかな肉体が実現できて人生で最も豊かな老年期を送ることが出来るでしょう。その逆に、血管の老化を促進させてしまえば、速まった肉体の老化で不幸な人生となることが暗示されるのです。→◆258 高血圧 それでも長生きできますか?

血管障害が、全身の老化に至る
全身の細胞は、血管内から栄養をもらい不要な排泄物を血管内に捨てます。血液はその栄養と廃棄物を同時に運ぶトラックのようなものです。血管とはそのトラックの走る道路です。
血管が劣化(老化)して狭くなったり、詰まったり、破れたりすれば、そこから先の細胞には血液の流れが悪くなり栄養が十分に届きませんから、細胞の生活活動は直ちにダウンしてしまうでしょう。
血管の老化が肉体の老化に直結することを表現した「老いは血管から」とは、まさにその現象を一言で表した分かり易い例え話です。肉体の老化は誰も例外なく年齢と共にゆっくり進行していきます。しかし血管の老化が早ければ肉体の老化も当然のように早まります。
血管老化を早める因子はたくさんありますが、肥満、ストレス、過労、重労働、運動不足、過度な運動、喫煙、多量の飲酒習慣、睡眠不足等の生活習慣がその代表です。この様な生活スタイルは確実に血管の劣化を早めて肉体の老化が加速されるでしょう。
それとは別の因子で、高血圧、糖尿病、高コレステロール、高尿酸等の病気も確実に血管を劣化・老化する重要な因子です。これらは外見からは見えないだけに、症状が分かり難ければ静かに確実に体を老化させてしまう恐ろしい病気であるといえます。
血管の老化が加速されて実年齢以上に肉体の老化が進行すれば、比較的若いにもかかわらず本来は高齢者の病気であるはずの、脳(脳卒中)、心臓(心筋梗塞)、腎臓(腎不全)の重大な病気が時期早く発症することになります。時にはそれが生命を奪うこともあるので、「サイレントキラー」と言われる理由です。
高血圧の悪質さ
高血圧、糖尿病、高コレステロール、高尿酸の病気はどれも血管の老化を加速する重大な病気と言えますが、とりわけ高血圧はその悪質さで注目すべきだと思います。高血圧が及ぼす影響は糖尿病と高コレステロール以上に大きいと思われるからです。
高血圧は、血管系の親分とも言える心臓から始まり全身の動脈血管全てに障害を加えます。障害される臓器でとりわけ重要なのは、心臓、脳、腎臓です。
高血圧によって、心臓は肥大し次第に心臓の筋肉全てが確実に重い損傷を受けます。最終的に心臓は大きくなり心不全へと進行するでしょう。また心臓の栄養血管の冠動脈も確実に傷害され、狭心症から心筋梗塞へと進行するでしょう。
また脳の血管が傷害されれば、脳出血、脳梗塞などの重大な病気が発症するでしょうし、腎臓の血管が傷害されれば腎臓がダメになって腎不全になるでしょう。
どの病気も生命に直結する重大な病気ばかりです。高血圧はこの様に体の老化を加速するだけではなく、比較的若くしてその生命を奪ったり、その後の生活を一瞬で崩壊するような病気も発症させます。
その影響の大きさと重大さは、糖尿病と高コレステロールの破壊力よりさらに一段上の悪質さであると私は日頃考えています。
高血圧が心臓に与える影響は、非常に重大です。心臓病のあらゆる病気に悪い影響を与えるでしょう。それも一時的ではなく、24時間絶え間なく、長期にわたって悪影響し続けますから、何かの心臓病を持っている人はその病気を悪化させないためには、必ずこの高血圧を治療して克服しておかなければなりません。
ほとんどあらゆる心臓病に対して高血圧は悪い影響を及ぼしますが、全く問題のない健全な心臓であっても、高血圧は新たな心臓病を作り出してしまいます。従って、高血圧はその病気があると分かったら、それ以外に何の病気もなく、何の症状もなくても、この病気は治療しておくべきなのです。
高血圧、将来の予定される病気
高血圧を治療しなければ、将来は心臓、血管、脳、腎臓でそれぞれの問題の病気が表れてきます。おこるであろう病気の重さや時期は、高血圧の程度や期間、その他の病気の有無によって変化しますから単純ではありません。
当然ですが、重い高血圧で、長期間の無治療、他の病気(例えば糖尿病、高コレステロール)の合併もあれば、悪い結果は早く表れ重症になる事はたやすく予想出来るでしょう。
悪い結果の発病はある日突然のように見えますが、そう見えるだけであって実際は数年も前から予定されたコースの延長線上の出来事で、必然の結果です。
その発病は何時、どこで、どのように起こってくるかの予想は事前には出来ませんが、高い確率で起こることが約束されているようなものです。
高血圧で将来予想される病気とは、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、狭心症、心肥大、心不全、心房細動、期外収縮、腎不全等々です。しかし、これが何時、どこでなのかは予想出来ないのが残念です。
まとめ
「老年期は賢者にとって黄金のときである」とユダヤの古い諺にあるそうです。もし健やかな体であれば老年期は人生最高の黄金期であると言っているようです。しかしそのような素晴らしい黄金の時を奪ってしまうのが高血圧の恐ろしさです。ぜひ早めに治療しておくことをお勧めします。→◆258 高血圧 それでも長生きできますか?