そんな原因は複数あります。今回は「測定で腕が痛い」例を取り上げます。
画像:不思議の国のアリス
「看護師さんが測ると痛くて・・」
「見せかけの高血圧」という高血圧患者の考え方をお話ししています。今日はその2回目です。
測定で腕が痛くて高くなる例
血圧測定で強く締め付けたためその痛みで毎回血圧が高くなってしまう患者を話します。
50歳代の女性です。高血圧があってある病院で治療中でした。そこでは血圧はいつも140mmHg台で安定していましたが自宅で測るといつも110~ 120mmHgとよい値です。病院では緊張して少し高くなるのだろうと思って気にしてはいませんでした。
その人がある時家族のすすめで当院で高血圧の治療をすることになり、私の診察を受けることになりました。初めての診察ですから、お会いしていきなり血圧を測りますと緊張で高くなるのは普通のことですから、しばらくいろんな話をしてからおもむろに患者の左腕で血圧を測りました。116/70mmHgと良い値です。
「ちょうど良いですね。薬がうまく調整されていますから、このまま続けていいと思いますよ」と話しました。
患者は「不思議です。いつも病院では必ず140mmHg以上になるのですが・・。今日は緊張しなかったのでしょうか?」と不思議そうに話されました。
私:その血圧は診察室で先生が測るのですか?
患者:いいえ、先生は測りません。診察前に看護師さんが測ってそれを先生に報告していました
私:測る看護師さんは、いつも同じ人ですか?
患者:2~3人の人が交代していますが誰が測ってもそんなに変わりませんでした
私:測定する時間はいつも同じですか?
患者:はい。だいたい午前中の10時前後です
私:測る時に腕が痛くなりませんでしたか?
患者:はい痛いです。いつもです
私:自宅で測る時は痛いですか?、今日の私の測り方は痛かったですか?
患者:自宅では痛くありません。今日の先生の測り方は痛くなかったです
私:その病院で高かったのは恐らく測る時に痛かったからだと思います。測定でマンシェットの圧を上げ過ぎると腕が痛くなります。痛いとそれだけで血圧は高くなってしまいます。きっと看護師さんの測り方は圧を上げ過ぎていたのでしょうね
と説明しました。
血圧は誰がどう測っても同じ、ではない
血圧の測定は予想する血圧より20mmHg位まで高く上げてから、下げ初めて測定します。150mmHgと予想するなら、170mmHg位まで圧をかけます。この程度以上に高くなると人によっては腕が少し痛いでしょう。圧の下げ方ですが、正確に測るなら圧をゆっくりと落としていくのですが、その下げ方が遅ければ腕の痛みが更に増します。
従って、どこまで圧を上げるか、下げ方が速いか遅いか等で、測定時の腕の痛さが変わります。正確に測ろうとすれば、高い圧まで上げて、ゆっくりと下げるのがよいのです、患者の腕はかなり痛くなってしまいます。結果として、本当ではない「見せかけ」の高い値を測定してしまうことになります。
血圧の測り方によっては、値が正確でなくなりますから「血圧測定は誰がどんな方法で測ろうと同じ値が出る」わけではないと理解して下さい。血圧は状況を適切に判断し上手に測らなければ正しい値が得られないのです。
家庭血圧計も同じ
医療従事者が水銀血圧計と聴診器で測定してもこの様なことが起こります。家庭血圧の自動血圧計でも似たような様な事がおこります。
説明書に書いてある通りに測定して下さい。まず測定開始で腕に巻きつける布製の帯(マンシェット)に圧が加わっていきますが、ある加圧の時点から自動的に空気が抜けて圧が下がっていきます。
しかし完全に空気が抜けないうちに、途中からまた加圧が始まり今度は前よりさらに強く加圧され締め付けられるようになります。
最初より強く締め付けられるので今度は腕が痛くなります。さらに悪いことには家庭血圧計は圧の低下速度を遅く設定してありますから(正確性のためでしょう)計測が終わるまで時間がかかり痛さが強くなります。
我慢して計測の終了を待ちます。終わってもしばらくは腕が痛みます。また腕の皮膚には強い加圧のため小さな点状の皮下出血斑が多数出ていることもあります。そんな時に血圧は必ず高い値になっているでしょう。
緊張で高くなり痛みでさらに高くなる
最初の加圧で機械の予測より血圧が高かったので、機械は自動的に再加圧をしています。その時は加圧のレベルは最初よりかなり高い値に再設定されますから(設計によりますが200mmHg 位でしょうか)その強い締め付けで腕が痛くなるのです。
血圧を測る時、緊張感だけで上がってしまう人がいます。また測定の結果がいつも高いと「また高いかも知れない?」不安も加わり測る行為だけで安定時よりも高い血圧になってしまいます。
普通より高くなった血圧のために加圧が普通以上に強くなってしまい腕が痛くなり、その痛みのために高い血圧が更に上昇し、もっと強い加圧が加わりさらに痛くなるという悪循環にはまり込みます。