◆296 匿名メール「心不全の例え話が不適当」への回答

このコラムは、「閑中余話」　2017.08.08　から「けやき坂コラム」に転載したものです。

 

匿名のWさんからメールが届きました。

匿名の方にはご返事しない方針なのですが、その内容は他の多くの読者にとっても同様に疑問かも知れないと考え、Question and Answer形式で、この場で私の考えをご紹介しようと思います。

Wさんの手紙で、ご意見の主旨と無関係な部分は、一部ですが省略しました。

 

QUESTION

はじめまして。突然ですがメールをさせていただきます。

・・・省略・・・

心不全の記事が目に入ったので読んでみました。

こちらの記事です↓
https://www.keyakizaka.com/column/cardiology/220-recurrence-of-heart-failure/

この記事では、「心不全が起こる理由」という記事の中に、
「弱った心臓は年老いた馬」と書かれている部分がありますが、
これはとても見過ごすことができない表現です。

このメールが読まれるかわかりませんが、
クリニックを開業されている医師であれば、もう少し患者の気持ちを考えて発言され
てみてはいかがでしょうか？

・・・省略・・・

あまりにも酷かったのでメールしてみました。

W

ANSWER

W様

貴重なご意見をありがとうございました。

心不全の例え話でWさんに大変不快な思いをさせてしまったようで、誠に申し訳ありません。

Wさんも良くご存じの様に、心不全は原因も病態も極めて複雑で、一般の皆さんにその本質を簡潔に分かりやすく説明するのは至難です。

しかし、それを超えて、医学をご存じない多くの方々に何とか「心不全の心臓」を理解してもらうためにと設定した象徴が、今回の「年老いて弱った馬」のイメージです。

難解で複雑な「心不全の心臓」を理解するために、皆さんのよく知る具体的なものでイメージしてもらわなければなりません。どんな具体的イメージが最も分かりやすいでしょうか、熟考して選んだその象徴が今回の「年老いて弱った馬」でした。

しかし、このイメージが心不全患者のWさんにとって、不快なイメージになったとは、誠に迂闊だったと思います。配慮が不足していたと思います。初めての指摘で私には予想外の意見でした。

一方、心房細動で心不全のWさんの場合は、「心不全の心臓」の例えが「年老いて弱った馬」では適切な例えとは言えない部分もあります。

様々な病態が存在する「心不全の心臓」を、たった一つの象徴で想像、理解してもらうのは強引かも知れません。少なくとも「年老いて弱った馬」だけでは不十分かも知れません。

しかし、そのような限界を抱えながらも、この象徴は多くの一般の方々が心不全という難解な病態を簡単にイメージ出来る分かりやすい具体像として、現状ではそのメリットの方がデメリットよりも上回るのではないかと想像しています。

実際、多くの読者が私の心不全の記事を読んでくれました。一般の皆様に心不全の理解でなにがしかのお役に立てているものと想像しています。

「心不全の心臓」をどのような象徴にすればベストでしょうか。私には未だ最終的な答が見つかりません。より適切な象徴を求めて今後も引き続き熟考したいと思います。アイデアがあれば教えて頂ければ幸いです。

この度は貴重なご意見をありがとうございました。今後の参考にさせて頂きます。

 

追伸

「年老いて弱った馬」は「心不全の心臓」のイメージであって、「心不全の人」、即ち心不全患者さんをイメージしたものではありません。老婆心ながらこの点、混同なさらぬようにお願いします。

 

■╋■╋　　けやき坂クリニック　竹田 幸一
╋■╋　　栃木県鹿沼市坂田山１－２８－２