ストレスとセロトニン
ストレスがかかると、脳幹にあるセロトニン神経が抑制されて、セロトニンの分泌が低下します。セロトニンとは精神の安定を保っている重要な脳内神経伝達物質ですから、これが不足した状態になると、精神が不安定になったり、自律神経のバランスが乱れてしまいます。
具体的な精神症状は、イライラしたり怒りっぽくなったり、強い不安を感じ、仕事や日常生活で集中できないと言った支障が出てきます。不安や抑うつ、集中力の低下や無気力、暴力的など、すなわち「うつ病」の原因は、まさにこのストレスでセロトニンが欠乏したことから引き起こされると考えられています。
セロトニン不足の原因は、ストレスだけではない
セロトニンが不足する要因は、実はストレス以外にもあります。
日常生活のリズムが崩れていたり、偏食や運動不足などでも起こります。
昼夜逆転した生活や家にこもりっぱなしで太陽を浴びないでいると、セロトニン神経が活性化されずに弱ってきてしまいます。社会に対して何らかのストレスがある人が表に出ず、人と関わらず、運動もせずに家にじっと引きこもっていると、セロトニンが欠乏して、ますます抑鬱状態を助長させてしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
ストレスと過食の関係
強いストレス下において、なぜたくさん食べてしまいたくなる現象が起こるのでしょうか。
それは、人の体は炭水化物(パスタやラーメンなどの麺類、ご飯、パンなど)や甘い物を大量に摂取するとセロトニンの合成があがるので、一時的な精神安定へと導くからです。
そのため、過食の患者さんは、食べ過ぎてはいけないことが頭ではわかっていても、漠然とした不安や苛立ちを解消するために「どうしても食べたい欲求」に襲われ、一度にたくさん食べてしまうのです。
つまり過食に陥いっている時は、自分の体がストレスを抱えているというシグナルなのです。
逆を言えば、ストレスに対する自己防衛であり、食べることで精神の安定を得ているわけです。
しかし過食症の患者さんは食べた後に強い自己嫌悪に苛まれます。太ることを気にして過食嘔吐症に移行していくのもよくあります。
そのような患者さんは、いけないことだと考え自己嫌悪に落ち込んでしまうのではなく、疲れている自分を過食以外の方法で救ってあげようと、その考え方を変えてみることが大切です。
しっかり治すための薬物療法
過食症を自力で治すのはかなり至難です。
一度過食による一時的なストレス解消方法を身につけてしまうと、そこから抜けだすことは容易ではありません。
過食症に対してはよく効く内服薬があり、専門医で処方してもらえます。しっかり治療を受けましょう。
心の健康のために、セロトニン神経を鍛える
自分の人生の中でストレスに負けない精神や身体があれば・・!と皆が望むものです。
毎日をイキイキと輝いて生活するために、落ち込みすぎたり不安でどうしようもなくならないように、これから毎日少しずつ生活習慣を整えてみましょう。
日光浴
まず、1日30分も太陽を浴びればそれだけでセロトニンは活性化されます。目の網膜から入ってきた太陽の光でセロトニンは刺激されますので、日焼けの目的のように薄着になる必要はありません。
リズム運動など
またリズム運動と言われる、単純なリズム動作の繰り返しも良いと言われています。歩行やジョギング、咀嚼、ゆっくりとした呼吸(呼気を意識して3−4回/分)、自転車、スクワット、筋トレ、踏み台昇降など、なんでも良いのですがこれを5〜30分集中して持続することで、セロトニンが活性化されます。
この時テレビを見ながらとか掃除をしながらなど何かをやりながらではなく、その行為に気持ちを集中してリズム運動を行うのがポイントです。
あなたがもし朝いつもより少し早く起きて、散歩やジョギングあるいは筋トレをしてから出勤すれば、とても清々しくスッキリとした良い気持ちで、その日の始まりを迎えられることは間違いありません。
スキンシップ
そのほか、人と接したりスキンシップをはかることでオキシトシンというストレスを和らげるホルモンが分泌されますが、このオキシトシンによってセロトニンの活性も誘発されることがわかっています。スキンシップも有効ですが、誰かと話して心を通わせるという行為だけでも効果はあります。
自分の悩みが根本的に解決されなくても、話を聞いてもらい共感してもらっただけで心がすっと軽くなった、という経験は誰でもあると思います。
誰かと関わりを持つ、話を聞いてもらう、スキンシップを図る、このような行為は心の安定を図るのに欠かせない非常に重要なものなのです。
それらを継続すること
大事なことは、これらを1日でやめずに継続して行うことです。
一回の運動で気持ちが安定する効果は短時間なのです。
しかし毎日30分以上のリズム運動などを数ヶ月以上継続することで、セロトニン神経が鍛えられ、ストレスに強い脳の構造へと変化していきます。
少しの努力の積み重ねで今よりも強い自分になれるなら、それは何ものにも代えがたい財産でしょう。
自分を褒めてあげる
落ち込んでいる自分が、今よりもっと明るく前向きになれて心身ともに元気にその日を過ごせたら、それだけでよくやってると自分を褒めてあげましょう。
今日できたことを挙げてみて、自分を肯定するということは、心が折れている時には大変重要なことなのです。