

重症心不全の辛さは、「死の苦しみ」に近い!
重症の心不全に一度でもなった 方は心不全には二度となりたくないと思います。辛く苦しい病気です。心不全になる誘因はいろいろありますが、最もよくあるのは体内水分量の過剰です。
「心不全にはなりたくない」。これが心不全予備軍の患者さんにとって最大の関心事です。心不全をどうやって治すかより、心不全にならないようにすることが大切です。心不全の詳しい治療は専門医に任せるとして、患者さんが日常生活で出来る心不全の治療とは、心不全に行かせない予防の日常生活です。
症状の重さは、主に「体内水分の過剰な量」に関係する
まず心不全の症状を、軽いから重いに向かって順にお話しします。これを読みますと、心不全の症状とは体内に貯まった水分量が増えるに従って重症になって行くのが分かるでしょう。
心不全では、患者さんの飲む水分量が多すぎるだけでなく、心不全の病気そのものが水分を体内に貯めやすくなっています。健康な方と較べより一層の厳しい水分制限が必要になります。
重症の心不全症状:
深夜に息苦しくなって起き上がり、座った姿勢でゼーゼー、ヒューヒューと呼吸します。仰向けで寝ていると苦しくてたまらないのです。窓を開け放ち胸いっぱいに空気を吸いたくなります。「これで死ぬのか」と思うほどです。

心不全症状の進行
心不全が軽いうちは、階段の昇りで足などが疲れ易く息切れがする程度です
●軽い運動で、足が疲れやすくなる
初期の心不全症状は、軽い運動で足が疲れるようになる程度です。
●軽い運動で、疲れ易く、ドキドキして、息苦しくなる
少し進行しますと、運動時に足が疲れるだけでなく、肺に水がたまって肺うっ血や胸水となります。肺に水がたまると酸素を上手く取り込めないので呼吸が荒くなり、心臓はドキドキして息が苦しくハァハァします。軽い仕事や運動でも、酸素不足となり疲れ易くて息が切れます。
●足がむくみ、食欲が落ちる、咳や痰がでる、体重が増加する
脚に水が過剰に貯まれば、足のすねがむくんで腫れます。靴下の痕が強く残ったり,親指で押すとはっきりした凹みの痕(浮腫)が残ります。
さらに進めば、お腹の中にも水が貯まります。肝臓が腫れたり外から押すと痛みがあったり,お腹全体が盛り上がって膨れてきたり,食欲がなくなります。疲れやすさが強くなり意欲もかなり低下します。
肺にたまった水を外に吐き出すために、咳や痰が頻繁にでるようになります。
●体重が相当に増えて、顔や瞼までむくむ
水の体内貯留がさらに増えますと、体で一番高い位置にある顔にも水が貯まります。顔のむくみ始まります。顔のむくみは瞼のはれが分かりやすいでしょう。
この段階では体内の過剰水分のため、体重が5キロ以上は確実に増えているでしょう。10キロくらい増えていることもあります。
●最重症なら、死ぬかと思う苦しい呼吸困難が、深夜に襲う
さらに重症に進行すると、布団に入って眠ってから夜中に息苦しさが出てくるようになります。
特徴的なのは、深夜仰向けの姿勢では息苦しくて眠れず、上半身を起こすと苦しさが少し楽になるので、布団の上で上半身を起こしたままで浅い眠りを取るようになります。これを夜間の「起座呼吸」といいます。
酸素がまったく足りなくて、窓を開け放って空気を胸いっぱいに吸いたくなります(酸素ボンベなしで潜水しているような状態です)。苦しい時に「自分はこれで死んでしまうのか!」と思うほどです。このような症状が出たら、心臓の弱り具合も体内の過剰水分量もかなりのレベルまで来ています。急いで治療が必要です。
心不全を発症する誘因
心不全の一般的な症状とは、むくみ、息切れ、呼吸困難、動悸、全身のだるさ・疲れやすさ、食欲低下、意欲の低下等です。それが起こる原因は、弱った心臓に負担が多すぎることです。その負担とは、
●水分の摂り過ぎ(アルコール、味噌汁は勿論、果物、水羊羹、おかゆ等も水分が多い)
●血圧が高い、血圧を上げる薬や食品
●塩分の摂り過ぎ(味噌汁、梅干し、漬物、焼きそば、すき焼き、お寿司等)
●速い脈(頻脈)、脈を速くする薬や食品
●過労
●強い興奮、緊張、ストレス
●重い労働や作業
●過度なスポーツや運動
●過食、過量のアルコール
●肥満
●貧血
●高熱の病気(インフルエンザや肺炎等)
●心臓を刺激する病気や薬や食品
●代謝を亢進する病気や薬や食品
●心臓に毒性のある薬や食品
●その他
等があります。こんなことが弱った心臓にとって大きな負担となり心不全を発症させます。心不全予備軍の方は以上の発症原因の「全部」を上手に回避するような日常生活や内服薬治療を心がけるべきです。
心不全発症の、最も良くある原因は、水分の過剰!
多くの心不全予備軍の患者さんは、すでに体力はかなり落ちていますからもう無理なことはしたくても出来ません。重い作業や強い運動は普段から無意識に避けています。患者さんも分かっていますので心不全発症の原因となる事は少ないでしょう。また体力が落ちているのを自覚していますので、風邪をひないように日常生活も注意しています。
しかし水を飲み過ぎないこと(水分摂取を制限する)は意外に守れない方が多いのかも知れません。話は聞いて分ってはいるのですが、何気なく少しずつ飲水量が多くて気がついた時には5~6㎏以上も体重が増加して、心不全発症の危険レベルになっていることです。
日常生活で、水分過剰を回避できれば、心不全は相当抑えこめる!
当院の心不全予備軍の患者さんが心不全を発症するもっともありふれた原因は体内の過剰な水分貯留です。これを日常生活で厳重に管理できれば、心不全の発症をかなり避けられるでしょう。心不全になった時の対策や治療を考えるより、ならないように毎日の管理を徹底することが大切です。
当院では心不全予備軍の患者さんには、いつも口が酸っぱくなるほど水分制限の徹底を繰り返しお話しして心不全の発症を予防しています。この飲水制限の徹底で、当院では心不全を何度も繰り返し発症する方は極少数に抑えられます。
続く・・・
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