高血圧の治療
今日は高血圧という病気の治療について、知識のない人でも不安を持っている人でも分かるように要点をまとめてお話しします。
高血圧は「体質の病気」と言ってよいと思います。様々な多くの要因が重層的に関係し高血圧になります。現代の医学でもこうすれば高血圧が完全に治るというような方法は未だ見つかっていません。
従って高血圧の治療とは、残念ながら「日常生活の改善」と「医薬品の内服」の両輪を毎日根気よく続けていくしか現在のところ方法はありません。
簡潔な原則はそうなのですが、それだけでは高血圧の治療についてまだまだ分からず不安でしょう。これからお話しする内容です。
1)日常生活の改善とは
2)優れた薬の効果
3)薬はいつから始める?
4)自らも治療に参加する
5)治療に終わりはあるか?
6)症状はあるが治療で消える!
7)薬の副作用はあっても軽い
8)薬でも血圧が下がらない?
9)よくある疑問
1)日常生活を改善とは
皆さんの日常生活の改善だけで降圧の効果は目に見えてハッキリは現れないかも知れませんが、やはりこれを避けて通ることは出来ません。日常生活改善をどのように取り組むべきでしょうか?
その方法や効果については以前お話ししましたが(◆高血圧 薬を飲まずに下げられますか?)、結論を簡単にお話しすると
・ストレスを解消し
・過食を避け食品を選び
・肥満を解消しスリム体型となり
・禁煙し
・適度の飲酒で
・生活を規則正しく
・十分な休養と睡眠をとり
・適度な運動を習慣とし
・糖尿病や高コレステロールを正常化し
・動脈硬化を改善する
等です。
どのような具体的方法であれ、これら全てを十分コントロールできれば立派で素晴らしいです。
多分高い血圧が良い方向に改善するでしょう。しかしそれで血圧がどこまで下がるかは個人差が大きくてよく分かりません。
2)薬の優れた効果
日常生活の改善に較べ医薬品の効果は非常に早く確実です。毎日飲み続ける必要はありますが、血圧は飲み始めたその日から時間を追って見る見る下がっていきます。2週間も飲み続ければかなりのレベルまで下がるでしょう。
ただし一回内服した効果はせいぜい24時間以内です。この時間を超えれば効果がなくなりますから間もなく血圧は元の高い値に戻ってしまいます。これが現在の薬の限界です。
高血圧の薬は種類が豊富ですから、どの種類をどれだけ飲むかは医師の判断になります。判断材料はたくさんありますが、患者の性別、年齢、合併している病気や薬の内容、高血圧の重症度等です。その考え方について以前お話ししました(◆高血圧治療 薬の選び方は医師の個性)。
3)薬はいつから始めるか?
血圧を測ったら高かったと言って、直ちに治療が必要な高血圧とは限りません(◆その高い血圧 治療が必要な本物か?、不要な見せかけか?)。一時的な高血圧だったのかもしれませんし治療が必要な高血圧かも知れません。
どの時点で薬を開始するかの判断は別途お話ししました(◆高血圧の治療開始? 誰でもわかる、こんな血圧なら病院へ)。
家庭血圧を少なくとも1~2週間連続して測ってから判断するのをお勧めします。その家庭血圧のデータから病的な高血圧で治療が必要と判断したら薬の内服を考慮します。その考え方の基準も上のコラムで説明しました。
4)自らも治療に参加する
治療が始まって薬を飲み始めたら、あとはただ薬を飲み続ければよしとは考えないで下さい。自分の病気が薬の治療でどのように良くなっていくのか、また良くなっていかないのか、自ら血圧の変化を観察しながら治療の効果をチェックし続けることです。
これを「治療に参加する」と言っています。医師に治療を丸投げしているだけでなく自分も参加することが大切です。
高血圧の治療を始めたがらない患者をその気にさせるにはどうしたらいいでしょうか?、私たちの経験から得た知恵を以前お話ししました(◆「高血圧を治したい」と、その気にさせる治療法)。
自分の健康や命のかかった病気ですから治療経過を良く観察してください。それほど難しくはありません。治療に参加することの大切さは、まず家庭血圧を毎日測定することから始まります(◆家庭血圧 誰でもわかる、測り方のコツ)。
5)治療は終わりのない戦いか?
この疑問(◆高血圧の薬 始めたら一生飲み続けますか?)は患者からよく聞きます。
確かにそう言えなくもないですが、薬の量は時間経過とともに徐々に減ることはよくあります。そしてついに薬を止めても血圧は上がらず薬が不要になる人も時々います。
しかし大多数の高血圧患者は薬を止めれば高い血圧に戻ってしまいます。多くは長年月に薬を飲み続ける必要があるでしょう。
6)症状はあるが降圧で消える
「高血圧だが元気で何ともない。高血圧には症状がない」と誤解している人がたくさんいます。これは間違いです。ハッキリした症状があります。
頭痛、肩こり、疲れ易さ、息切れ等です。ただそれを高血圧の症状だとは考えていないのです。
年齢のため、仕事のため、ストレスのため、過労のためなどとその原因を自己流で高血圧以外に解釈しているだけです。高血圧の治療でその症状が消えてすっきり爽やかになります(◆高血圧の症状は、下がると消える!)。
私の治療と説明でそれを明確に自覚できた患者は血圧を下げておくことの重要性を理解し、以後は薬の治療を自分判断で中断したり、飲み忘れたりは決してしなくなります。これは多くの経験からの重要な事実です。
7)薬の副作用はあっても軽い
高血圧の薬に限らず医薬品とはすべて副作用があります(◆薬の副作用 不安で心配です!)。しかし薬とは本来必然的にそのような側面をもつもので、あらゆる薬には副作用があります。
高血圧の薬によくある副作用は、
フラフラする、気分が悪くなる、ドキドキする、頭痛がする、脈が遅くなる、咳が出る、顔や体が火照る、尿量が多くなる(特に夜間に)等です。
どれも大した副作用ではなく薬の種類の変更や量の調節で簡単に解消します。その他にはどの薬にもあるような一般的な副作用です。
血圧の薬によくあるこの特徴的な副作用が、けっこう高頻度におこり不快なので、患者は不安で神経質になっているようです。しかしどれも実質的に大した問題ではありません。解決は容易です。
血圧の薬には特別重大な副作用があるとは思えません。他の薬と同じように安全な薬だと思います。安心して内服してよいと思います。副作用について詳しくはお話ししました(◆高血圧 誰でもわかる、薬の副作用はどんなものですか?)。
8)薬でも血圧が下がらない?
薬を飲んでいるが血圧が十分に下がらないと不安になり当院を受診される患者がいます。診察の後に内服中の薬の内容や日常の家庭血圧の推移などを確認してから当院の考えをお話しします。多くの人はあまり重大な問題でないことを知り安心します。
十分に下がらない理由は、薬の種類や量が不十分、血圧の測り方に問題があり本当の血圧を見ていない等いくつか想定されます。
これについては詳しくお話ししました。この問題に関心がある人はそこをお読みください(◆薬を飲んでも、血圧が下りません)。