研究結果要約を引用した全文:
人間は「認知症になりにくい」ように進化した?
提供元:HealthDay News 公開日:2015/12/15
ヒトは進化の過程で、高齢になっても精神機能を低下させないための遺伝子変異をもつようになったことが、米カリフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD)のAjit Varki氏らの研究で示唆され、論文が「Proceedings of the National Academy of Sciences」に11月30日掲載された。
原則として、脊椎動物では、生殖できなくなった個体は死ぬようにできている。しかしヒトと一部のクジラはその例外であり、そのため高齢者は重要な知識を後代に伝え、孫の世話をするといった作業を手助けできると、著者らは説明する。
研究では、アルツハイマー病に抵抗する遺伝子変異であるCD33の濃度が、ヒトではチンパンジーの4倍であることがわかった。また、APOE2と APOE3と呼ばれる遺伝子変異も、認知症を予防するために進化したと思われることも判明した。Varki氏は、「期せずして、高齢者を認知症から守るの に役立つ遺伝子変異があることが判明した」と述べている。
「高齢者が認知症になると、その社会は知恵や知識の蓄積、文化の重要な情報源を失う。さらに、軽度の認知機能の低下があり、影響力のある地位にある高齢 者が間違った決断をすれば、その集団に害を及ぼす可能性もある。今回の研究はCD33やAPOEなどの保護的な遺伝子変異の選択に関与する要因を直接証明 するものではないが、この推測は妥当といえるだろう」と共著者の1人は話している。