要約:下腹部の急な痛みが起こる疾患の中で、もっとも多い原因はなんでしょうか。それはガスの溜まりによるものです。ガスの溜まりによって引き起こされる痛みは時として急激かつ激痛のこともあります。軽症でも腹部膨満感と言ってお腹の張りやガスが頻繁に出るといった日常生活に支障を来す不快な症状をもたらします。
ガスが頻繁に出る
ここのところやけにガスが多い、キツイ匂いがする。こんなことがあったらこれは腸がうまく機能していない証拠です。一般的に時々ガスが出るのは人間の正常な機能ですが、1日の中で自覚するほど何度も何度もガスが出るのは産生が多い、排泄がうまくできていない、ガスがたまっている証拠です。
気をつけて欲しいこと。腹部膨満感について
これはお腹が張って苦しいという症状です。腹部膨満感を感じる場所は二箇所あり、上腹部と下腹部に分けられます。
もしあなたがみぞおちのあたりが重苦しかったり、先程食べたものが
消化不良でなんだか残っている感じがするのであれば、それは胃の問題の可能性があります。しかし下腹部(おへその周囲、あるいはその下)が張って苦しい感じがするのであれば腸管の可能性で、その原因の一つにガスがたまっていることを考えます。
ただしこの腹部膨満感の中には放っておいてはいけない、治療を早急にしなければいけない病気があります。たとえば悪性腫瘍(癌)、腸閉塞、腹水、感染症、子宮や卵巣の疾患など、いずれも治療を行う必要のある病気です。一時的なガスのせいだという自己判断は大変危険ですので、もし腹部膨満感の症状があれば必ず医療機関を受診し、医師の診断を仰いでください。
激痛なんだけど?
腸内にガスが溜まりすぎると下腹部の一箇所に急に激痛が起こる頃があります。あまりの痛みに救急車を呼んだり、夜間救急外来を受診する場合もあります。診察や検査で原因がガスということが分かれば、痛み止めや腸の薬で排便やガスを促し時間と供に軽快するので大きな心配はありません。放っておいても自然治癒することも多いです。ただ痛みは腸管の蠕動に伴い緩急の波がありますので、しばらくの時間この強い痛みに悩まされることもあるでしょう。
大事なことは、上記に書いたように激痛の腹部疾患の中には「緊急手術や処置を行わなければいけない病気」が潜んでいます。例えば、皆さんがよく知っているような盲腸(虫垂炎)も、みぞおちのあたりあるいは右の下腹部に激痛がきます。虫垂炎は軽症であれば自然に痛みが軽快することもありますが、そうでなければガスの溜まりの問題と違って治療しなければ痛みは治まりません。くれぐれも自己判断せず、我慢しすぎは禁物です。
ガスを溜めないためには、治療法
ガスがたまる原因の多くは腸管の腸内細菌のバランスが崩れていることによります。この時大抵同時に便秘にもなるので、長い期間腸管に食べ物が停滞していると食物残渣が腐敗して発酵した匂いのガスが大量に発生したりします。
1.食生活が、炭水化物(ご飯、パン、麺類)や肉ばかり食べているなど偏っている。食事するのが早い、または過食。
2.不規則な生活リズム、睡眠不足
3.ストレスが多い
4.デスクワーク、接客業、運転手など、座りっぱなしや便意のあるときにトイレにいけないで日中も我慢することがある。または家の中にずっといることが多い、あまり動かない高齢者。
5.アトピー性皮膚炎、アレルギー体質
これらが当てはまる場合には腸内細菌のバランスすなわち善玉菌が減って悪玉菌が増えたり、腸の蠕動運動が低下しているので、便秘やガスが溜まるという症状が起こります。どれか一つの原因よりも、複合的にいくつか当てはまる場合にいっそう誘発されます。
まず自分でできる対応としてはできる限りこれらの原因を取り除くことです。更に乳酸菌を摂るように食事内容を工夫しても良いでしょう。内科的なお薬としては、腸内の環境を整える整腸剤や、排便を促す下剤、お腹の動きを活発にする薬、それからガスを吸収させる薬、痛みがひどい場合には痛み止めなど、幾つか組み合わせながら治療します。
まとめ
ガスが溜まっている時はおおよそ体調が優れなかったり、だるかったりするものです。原因の多くは生活習慣に基づきますので、幾つかの工夫と努力でより快適な日常生活が送れるでしょう。
万が一、不規則な生活によって起こるガスのせいであなたが夜間救急外来に行くことがあれば、これを機に生活習慣を改善するのも良いでしょう。
もちろん、私たちはその裏側に潜む重要な疾患をいつも見落とさないようアンテナを張っていますので、ガスのせいで起こっている症状なのかを一度診察で確認してもらうことをお勧めします。
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