期外収縮の2タイプ:上室性期外収縮、心室性期外収縮
不整脈の中で一番多いのが期外収縮と言われる病気で、上室性期外収縮と心室性期外収縮の2種類があります。専門的にはいろいろ違いはありますが、患者から見るとどちらもそれほど大きな差はありません。
症状に違いはないので、症状からだけではどちらか区別できません。違いはその時の心電図で分かります。逆に言えば不整脈が出た時に心電図を取らなければ区別出来ないのです。
大雑把には上室性期外収縮の方が心室性期外収縮より軽いと言えます。しかし心臓に重大な問題がなければ原則的にどちらも心配するような不整脈ではありません。
期外収縮の症状
症状は一瞬単発のドキン(ドキッ)が典型です。「単発の一回完結」が大きな特徴です。それが時間をおいて(数秒から数時間の間隔)何度も繰り返すこともよくあります。もし短時間で繰り返す場合は「ドキドキが続く」と患者は話しますが、実際は一発の不整脈が間隔を置いて繰り返しているだけなのです。
この不整脈の症状の表現は多彩で患者は様々な言葉で話します。→◆心臓病 「一瞬、ドキン (ドキッ)!」 これはどんな病気?
「胸がつまる」、「胸がポコン」、「バコン」、「ドキン」、「ウッと」、「クッと」、「バクバク」、「ハッと」、「胸の中で空気が破裂するような」、「ズキンと痛く」、「コロンと回る」、「一瞬の胸騒ぎ」、「心臓が動 きを一回休んだ」、「心臓が一瞬の空回り」、「胸が一瞬締めつけられた」、「脈が一回飛んだ」、「脈が一個抜けた」、などなどで す。
しかし、この不整脈のもう一つの大きな特徴は、不整脈の出現に全然気付かない人が非常に多いことです。その人にはこの不整脈が一日に何千回出ていても一回も気付かないのです。それが幸か不幸かは事情によるので簡単ではありません。この問題は別の機会に話します。
期外収縮:ストレスや不安で増える
この期外収縮は一旦出始めるとしばらく出やすい状態がしばらく続くことがあります。ストレスが引き金になる事が多いと以前話しましたが、そんな時期には不整脈も出続けると考えられます。→◆不整脈 期外収縮の多発 ストレスが契機となる人が多い
不整脈が出た時の感覚は不愉快です。心臓の一瞬の異常な動きですから、それが起こる度毎に短時間であっても不愉快な気分になるのです。この不愉快さを気にすると「また出るのではないか、出ると嫌だな」と考えれば、その不安がこの不整脈を更に誘発することになって益々その回数が多くなります。
こんなケースが非常に多いのです。即ち、不整脈の自覚症状そのことが不整脈発生の主要な強い誘因となっているのです。一旦出始めると次第にますます多くなってしまう悪循環に陥ることが良くあるのです。
■不安が晴れて期外収縮も消失
そんな患者の例を話します。
60歳代の女性です。数年前にこの期外収縮で当院を初めて受診しました。心電図、レントゲン写真、心臓エコー検査、24時間ホルター心電図などの所見を総合して、心配ない上室性期外収縮であることが分かりました。
患者には「心配のない軽い不整脈です。起こると嫌な感じはしますが、それで危なくなったり命を失うようなことはありませんから安心して放置して下さい。気にしなければ自然に出なくなりますから、そのうち忘れてしまうでしょう」と診察は終了しました。
その人が数年後に久し振りにまた来院しました。
「あれ以来、全く不整脈には悩まされずすっかり忘れていましたが、最近旅行中の電車の中で、また同じような不整脈が出てきました。それ以来、不整脈の出る回数が徐々に多くなってきて今週は毎日のように出ています」という話です。
以前と同じように検査すると同じ不整脈が出ていました。一日の不整脈の回数も同じであり、その他の検査にも大きな変化はありません。
「久し振りの不整脈ですから、この不整脈について少し神経質になってしまったのかもしれません。以前と同じで大した病気ではありませんから、このままで様子を見て下さい。安心して消えてしまうかも知れません。消えてしまえばそれでよいでしょう。もし変わらなければもう一度来てください」と話しました。これで患者の症状は消えて元の生活に戻りました。
不整脈が一度発生するとその症状が嫌で不快でその感覚からますます不整脈が誘発され回数が多くなってしまう例です。こんな場合は診察と検査で安心すると消失するのが特徴です。
■背後に狭心症が隠れる
こんなケースばかりではないのが病気です。一見同じような症状に見えながら全く別の結論だったケースです。
前に「問題ない」との検査結果でその後不整脈は消えていました。数年後の同じような症状の今回はいろいろ検査すると、前回とは変わった検査結果が見られました。
24時間ホルター心電図では、数年前の不整脈とタイプが変わっており(上室性期外収縮から心室性期外収縮へと変化)、不整脈の出現回数も一日に数百回から一万回まで増加していました。よく聞くと、以前とは違って今回は不整脈の症状とは違った「胸の圧迫感」が時々起るようになったことが分かりました。数年前の状況とは異なるようです。
今回は前回の様な単純な期外収縮ではなく、新たな狭心症に伴って不整脈が多発した可能性が高くなりました。一転して狭心症かどうかを詳しく調べることになりました。狭心症をどう診断するかは以前に詳しく話しました。→◆狭心症の治療開始 誰でもわかる、初めての診察の風景
心臓病の自己診断は危険!必ず専門医に相談を
一見すると同じ不整脈の症状の繰り返しであっても、背後に狭心症等の他の心臓病が同時に隠れている場合もあります。
多くの患者には期外収縮は危険のない放置してもよい良性の心臓病であると話してきました。しかし数は少ないですが、このように放置してはいけない期外収縮も中には紛れています。
皆さんが症状から心臓病を自己診断するのは危険です。心臓病は症状がどんなに軽く見えても症状だけから心臓の病気の軽重は判断できないのです。一度は心臓専門医に相談して下さい。
続く・・・
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